皆さん、明けましておめでとうございます。
健やかに新年をお迎えし、益々お念仏ご相続のことと慶賀に存じます。
しかし、歳を重ねれば重ねるほど、時間が経つのは早いですね。
善教寺は今年からいよいよ再建事業に入る予定です。
熊本地震から七年目に入ってようやく再建出来ます事は、これまでお待ちくださいまし
た善教寺の門信徒の皆様、関係者の方々のおかげです。
誰もが立ち寄りやすいお寺として再建して行きますので、これからも善教寺をどうぞ
宜しくお願い致します。

さて、この令和五年という年、皆さまはどんな年にしていかれますか?
いろいろな目標や計画などおありかと思います。
でもそれらを実現していく為には、何よりもご自身の健康が欠かせませんね。
この年頭の伝道掲示は、今回法語と言うよりは、私たちが生きていく上で必要な心構え
として出させて頂きました。

実は昨年11月に善教寺の坊守である私の家内が大きな手術を受けました。
家内は9年前に大動脈解離となり、大動脈が内側から裂けていくという、命に関わる
症状でしたが、なんとか一命を取り留めました。
大動脈は三層になっているそうですが、その内側が避けてしまっていますので、どうし
ても大動脈自体が弱くなり、動脈瘤が出来てしまいます。
これがおとなしくしてくれていれば良いのですが、家内の動脈瘤は残念ながらどんどん
大きくなっていき、とうとう大動脈を人工血管に置換する手術をしなければならない事
になりました。
手術だけなら良いのですが、この手術は
①術中に心不全により死亡するリスク
②術中に血栓が脳に飛び、脳梗塞を発症するリスク
③脊髄の神経も関係してくるので、手術後に下半身麻痺となるリスク
これらどれか、または全部の合併症が発生する可能性がある、と担当医から相当脅さ
れました。
しかし家内は「たとえ障害が残っても生きる道を選ぶ」と勇気ある決断をし、この度
手術に臨んだのです。
約七時間半に及ぶ手術でしたが、合併症もなく無事に終わりました。
ただ、元々の大動脈の損傷が思ったより大きかったようで、更にその三週間後に
カテーテルによるステント措置をする手術も受け、これも無事に終わり、先日退院して
きました。
(急に寒くなって体調を崩される方が続出して病室が足りなくなり、当初退院予定より
も早く追い出されました…)

この間、私は大型犬の老犬を連れて愛知県と熊本を往復しながら、普段の仕事をこなし
てきました。
家内がいないので、自分の仕事量は倍になるだろうな、とは思っていました。
しかし、倍どころか三倍も四倍もやることが増え、ゆっくり座れる時間さえありません
でした。
そう考えますと、普段家内は目に見えない細かな事も、全てやってくれていたんだな、
という驚きと、それを不平も言わず当たり前のようにこなしてくれていた事に、とても
大きな感謝がありました。
坊守としての門信徒さま方の対応や、お荘厳の華の活け替え、掃除に加え、大きな
ゴールデンレトリーバーの老犬と三匹のネコのお世話…これだけでも大変なのに、
普段の家事も当然こなしてくれていたんです。
今回、しばらくの独り暮らし状態になって、家内の存在の大きさにとても気付かされ
ました。
今まで、なんでも「あたりまえ」と考え、気にも掛けて来なかった事々を、この度の
家内の手術で「感謝」に変えることが出来ました。
何でも「ありがたい」…そう思えるようになったら、むしろ凄く心が軽く感じ、毎日が
とても充実した日々に変わりました。
実際には、私の身の周りの事は何も変わっていません。
しかし、私の捉え方、心持ちといった内面が変わっただけで、私の目の前の景色は
とても明るくなり、また楽しくもなりました。
どんな事も当たり前ではありません。
有り難い、のです。
有り難いとは、通常考えたら、「あり得ない」という事なんです。
そのあり得ない貴重な命を授かっている私。
今この世で生きている事が奇跡ですらあるこの私。
そう思うと、目の前のこと全てが「当たり前」ではなく、「感謝」しかないですね。
感謝が無いから自分は不幸に感じるんです。
感謝を持てば、自分はなんて幸せなのか、を実感します。

この度、家内の手術という出来事を経て、健康は全く以て当たり前ではない、むしろ
健康であることは、とてつもなく奇跡であり、ましてや歳を重ねれば健康ではない
ことが当たり前とも言える、ということを学ばせてもらいました。
しかし、健康であろうとなかろうと、今ある命、授かったこの命に感謝が出来るように
なれば、これからの人生は自分が思っていたよりも、相当明るく見えるでしょう。
今日あるこの命、明日目覚めることは当たり前ではありません。
だからこそ手を合わせ、仏さまに感謝し、周りの人々に感謝しながらの、この一年に
したいと思います。

南無阿弥陀仏
南無阿弥陀仏

合掌

善教寺住職・本願寺派布教使
釋 一心(西守 騎世将)







 


 
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