みなさん、こんにちは。
もう沖縄地方は梅雨入りですね。
梅雨とは、梅の実が熟す頃に降る雨だから梅雨と言われています。
実はこの梅雨の長雨、原因はチベットのヒマラヤ山脈であることをご存じでしょうか?
この時期になると、南にいた亜熱帯ジェット気流が少しずつ北へ北へと北上してきます。
そしてこのジェット気流は日本の西側にあるヒマラヤ山脈にぶつかり、ヒマラヤ山脈の
北側と南側との流れに分かれてしまいます。
ジェット気流の空気の流れよりもヒマラヤ山脈の方が高いんですね。

ヒマラヤ山脈の北側に向かった空気の流れは北側の気温の低い地方を通りますので、
温度が冷やされます。
反対に、ヒマラヤ山脈の南側に向かった空気の流れは赤道方面に近付くので温度が高く
なります。
そして北側に向かった冷たい空気の流れと、南側に向かった暖かい空気の流れが、日本列島
付近で合流します。


【世界で一番わかりやすい航空気象 (西守騎世将 著)】 より

この時、性質の異なる気団同士がぶつかるので、前線が出来ます。
これが梅雨前線です。
この梅雨前線、冷たい空気と暖かい空気の勢力が互いに押し合いしていて動かない停滞前線
なので、長い間日本列島の上に居座り、長雨を降らせます。

やがてしばらくすると、南にいた太平洋高気圧(小笠原暖気団)がこの前線を作る元となって
いる亜熱帯ジェット気流を北に押し上げます。
これが梅雨明けで、いよいよ日本は夏本番となります。

夏も終わりに近づくと、太平洋高気圧は徐々に日本列島から離れて南に戻って行き、北に押し
上げられた亜熱帯ジェット気流は再びヒマラヤ山脈にぶつかって南北に分かれ、また日本列島
上空で合流して前線が出来ます。
これが秋雨前線と呼ばれるもので、これが終わるといよいよ涼しい秋へと移り変わります。

そんなわけで、日本の春夏秋冬の美しい季節はこんな様々な要因によって出来上がるのです。
でも、冬になれば「寒い、寒い」と暖かい春を望み、夏になれば「暑い、暑い」と涼しい秋を
望むわがままな私たち人間。
人間が「寒い寒い」と文句を言う冬を乗り越え、春に力強く芽吹いた植物は、「鬱陶しい雨」
と思う梅雨時期にたくさんの水を蓄え、そして「暑い暑い」とぼやく夏の太陽の光を浴びて
秋にその実りを、不平不満を言い続ける人間たちに与えてくれます。
冬は寒い、夏は暑い、としか思わない私たちですから、冬と夏があってこそ春の芽吹きと秋の
実りがあるという大切なことを忘れ、不平不満しか言いません。

私が得度し僧侶と成る際に、とある先生から教えて頂いた言葉があります。
「私たち人間は、サランラップの芯の穴から世界を覗いて生きているのだ。仏教とは、この
サランラップの芯を外してくれる教えだ」というものです。
私はこの教えに衝撃を受けました。
サランラップの芯の穴は狭く、その穴から外の世界を覗いてもごく僅かなものしか見えません。
ですから、外の世界の全体像がわからないのでその芯の穴でしか見えないことを大切にしよう
とします。
つまり、サランラップの芯の穴こそが、偏った価値観であったり、都合で作られた制約、
ルールであったり、利己的な正義や善悪の区別、であったりすることもあるのです。
そしてそこに執着して生きているので、狭い世界観でしか物事を考えられず、広い視野で判断
出来ないのです。

桃太郎の物語を知らない方はいないでしょう。
人間に迷惑をかける鬼を桃太郎は退治し、めでたし、めでたしで終わるストーリですが、
仏教では「鬼にしてみれば桃太郎はとんでもない悪人ではないのか?」とも考えます。
節分に「鬼は外、福は内」と豆を投げますが「豆をぶつけられて、さぞ痛かろう、悲しかろう」
とも考えるのが仏さまの教えなのです。
仏さまは、生きとし生けるもの全てに大きな慈しみの心を向け、救おうとされます。
しかし、私たち人間は常に何かを、誰かを悪者にして、自分は正義側でいようとします。
でもそれは一方的な見方であり、都合でもあるんです。

浄土真宗の僧侶は肉食を許されています。
なぜそうなのか?と私も疑問でしたが、本願寺の前門主・即如さまは、その著書の中で
「動物や魚の命を奪ってはならないからと、野菜や米などの植物しか摂らないという考えも
確かにあるが、その植物にだって命はあるのではないか?だとしたら動物はダメだからと
植物の命を奪うことを良しとするのは、傲慢以外のなにものでも無いのでないか?」と
仰られています。
私たちは多くの命を奪わないと生きてはいけない身なのです。
そして目の前に並ぶご馳走は、単なる食品ではなく、多くの命なんです。
何でも当たり前と考える狭い視野、世界と価値観で生きていくと、こうやって私たち人間は
傲慢になっていき、自分が如何に傲慢であるのか?がわからなくなっていきます。
「害虫駆除」や、「雑草を刈る」とも言いますが、実は害虫という名の虫はおらず、雑草という
名の植物もありません。
それらは全て人間の都合、価値観でそう言っているだけなんですね。
ですから、逆に考えれば人間こそ地球にとって最も厄介な害獣かもしれません。

サランラップという執着を外して見ればいっきに視界が広がり、自分のルールを相手に押し付け
たり、相手の気持ちを考えない言動なども減っていくことでしょう。
心の中がニュートラルになれば、煩わしい人間関係によるイライラなども減っていくと思います。
なぜなら、私がそうでしたから。
仏さまは私たちに多くの智慧を授けようとして下さっています。

合掌

南無阿弥陀仏
南無阿弥陀仏

善教寺住職・本願寺派布教使
釋 一心(西守 騎世将)







 


 
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