十方微塵世界の
念仏の衆生をみそなはし
摂取してすてざれば
阿弥陀となづけたてまつる

(浄土和讃 註釈版聖典 五七一頁))


皆さん、こんにちは。
世界中でオミクロン株の急速な感染拡大、大変なことになっていますね。
このままでは社会活動すら危うくなると言われています。
今私たちに出来ることは一人ひとりの徹底した感染予防対策しかありませんので、感染を予防し、
不要不急の外出は避けるようにしていきたいものです。。

さて、最近はキャッシュレス決済なるものが主流になっていますよね。
私もクレジットカードは使いますが、その他の「○○ペイ」と呼ばれるキャッシュレス決済は使用
していません。
確かに便利でポイントも付与されてメリットもあるのでしょうけど、第三者による不正使用も多いと
聞きます。
そして最も大きな要因は、「なんだかよくわからない」なんです。
よくわからない、というのは、システムの信頼性も含めた決済制度そのものがよくわからない、と
いうことと、実際に現金を目にしないで買い物をすることによって金銭感覚そのものがよくわから
なくなる、ということです。
まあ、この感覚は人によって異なるでしょうが、特にご年配の方は私と同じ感覚を抱かれているの
ではないでしょうか?
「いや、そんなことないぞ。あれはいいぞ」という方がおられましたら、この若造にもその魅力を
お教えください…

今、世の中はこのキャッシュレスいう方向に向かっています。
まあ、現金をあまり持ち歩かなくて済むということで盗難や紛失のリスクは減りますし、支払い
そのものを簡易化でき、手間も省ける、ということはありますね。
私も先ほど、クレジットカードなら使う、とは言いましたが、それでも支払は未だに現金の方が
多いです。
これも申し上げましたが、金銭感覚がよくわからなくなる、という怖さと、後で請求が来るのが
なんとなく受け入れがたい…という感情があるからです。
しかも、私は過去二度、クレジットカードの不正使用をされています。
クレジットカードはあまり使わないので、毎月の請求額はあまり変わらないのですが、ある時届いた
請求明細を見て目が点になりました。
それは、80万円も多かったからです。
しかも明細書を見ても見覚えの無い航空券やホテルでの支払いで使われていました。
すぐにクレジットカード会社に連絡し、不正使用されていることを告げ、そしてこの不正使用分は
どうなるのか?を尋ねたら、「お客様の方で一旦立て替えて頂き、調査をした後に返金します」との
回答でした。
「ならば、利用店への支払いを止めてすぐに調査して下さいよ!何で被害に遭った私が、こんな高額
な金額を立て替えないといけないんですか?」と反論しましたが、返ってきた回答は
「お客様の自己責任ですから」という冷たいものでした。

自己責任…いつからか、こんな言葉がよく使われるようになりました。
自己責任とは、自分が選択したことにより利益や利便性を得るだけでなく、失敗や損失などのリスク
も自ら負うこと、です。
規制緩和政策による市場競争の促進で経済社会の効率性を高め、経済成長が図られるという看板の元、
近年特に政府や自治体などが市民の自己責任を強調するようになりました。
経済社会の効率性、経済成長と文字面を見れば一見良さげにも見えますが、言い換えれば、国や自治体
は、とあるラインから、市民、国民を見捨てる、ともいう意味です。
これはとある人達にはとても都合の良い、聞こえも良い言葉かもしれませんが、何の罪もなく、また
自らいろんな事に対処できない人達にとっては、冷たく、また恐ろしい言葉でもあります。
自らの選択はうまくいけばそれで良いのでしょうが、人は常に正しい選択をしてけるわけではありま
せんよね。
騙されたり、勘違いしたり、やむを得ず、で間違った選択をする事も多々あるのではないでしょうか。
大変な世の中、ましてやコロナ禍の中、苦しんで苦しんで苦しみ抜いても、解決の方法が見つからず
ついには自らの命を絶ってしまう方達がたくさんおられるという、受け入れ難い現実があります…

「自己責任だから…」と、そう諦めてしまう世界を作ってしまったのは世の政治家や役所です。
経済成長のために作られた「自己責任」制度ですが、この経済のおおもとの意味をご存知でしょうか?
それは「経世済民(けいせいさいみん)」という言葉が略されて経済と呼ばれているのですが、この
経世済民とは、「世を経(おさ)め、民を済(すく)う」ということです。
平和に世の中を治め、民衆を苦しみから救済することが「経済」であるにも関わらず、その経済成長
の陰で多くの方達を切り捨てるという、とてもとても恐ろしい言葉なんですね、自己責任って。
勿論、私たちは出来る限りの努力をしてなんとか間違った選択をしないようにしていかなければなり
ませんが、そこには限界があります。
だって、「当社の製品は出来が悪い」、「ウチの店の料理はまずい」、「私は詐欺師ですから注意
してね」と言う人はいませんからね…

今月のご和讃ですが、
十方微塵世界の
念仏の衆生をみそなはし
摂取してすてざれば
阿弥陀となづけたてまつる…は浄土和讃の中の阿弥陀経和讃です。
十方微塵世界のとは、あらゆる方角の世界のことを指します。
あらゆる世界の、お救いを信じ念仏申す衆生をご覧になり、そのお救いの光の中に摂取して決して
離さず、必ずお浄土に連れて往生成仏させて下さる方だからこそ、阿弥陀さまとお呼び申し上げるの
ですよ、という意味です。
摂取して捨てざれば…摂取不捨(せっしゅふしゃ)の利益(りやく)とも申しますが、阿弥陀さまは
その尊いお慈悲により衆生を必ずお救い下さると気付き、信じるわたしを手の上に乗せて、そして
何があろうとも決して放すことはないのです。
阿弥陀如来さまの立像をご覧になると、左手を開いて下に向けられていますね。
これは今まさにわたしを救い取る手であり、摂取不捨を表しているんです。
阿弥陀さまに背を向けてたとえ逃れようとも、必ずお慈悲に引き戻されるんです。
なんとありがたい、大きな大きなお慈悲のお心でありましょうか。

ですから、仏さまの世界では「自己責任」という言葉はありません。
「自己責任ですから」と突き放すことは決してなく、必ず、等しく私たちをお救い下さいます。
その手に掴んだら何があっても決して捨てることは無いのです。
困った人がいたら、なんとかその人の役に立てるように周りの人が手を差し伸べる世であるべきで
あり、それこそが真の「経世済民」の世であるべきだと私は思います。

ちなみに、私のクレジットカードの不正使用ですが、数ケ月の調査の後、中国人名義で航空券と
ホテルの支払いに使われたようで、当然私には中国の知り合いもいませんし、仮にいたとしても
クレジットカードの情報を渡すようなこともあり得ませんので、やっと不正使用と認められ、その
80万円は保険で戻ってきました。
どこでカード情報を盗まれたのか皆目見当つきませんが、どうか皆さんも私と同じ目に遭わないよう
くれぐれも情報管理にはお気を付け下さい。
じゃないと「自己責任ですから」と、冷たくあしらわれてしまいますから。

南無阿弥陀仏
南無阿弥陀仏

善教寺住職・本願寺派布教使
釋 一心(西守 騎世将)







 


 
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