真実信心うるひとは
すなはち定聚のかずにいる
不退のくらゐにいりぬれば
かならず滅度にいたらしむ


(浄土和讃:註釈版聖典 五六七頁)

皆さま、こんにちは。今年もいよいよ残すところ、ひと月となりました。
この師走は、何かと「年内中に…」と済ませたいことも出てきますし、お歳暮や年賀状の準備、
そしてクリスマスイベントや大掃除、その他年越しや新年を迎える準備など、普段よりも倍以上忙しく、
あっという間に過ぎてしまう月です。

やり残し、やり忘れなど無いように、計画立てて確実にこなしていきたいですね。

さて、今月のご和讃ですが、阿弥陀さまより賜る真実信心についてどのように向き合い、受け入れるのか、
といった内容です。
「如来の真実心が至り届いて信心を獲得した人は、ただちに浄土往生することが定まった人びとの仲間入り
をする。
往生が定まるということは、再び迷いの世界に退くことのない位(不退転の位)に入るということであり、
その位に入れば、この世と縁が尽きた時、同時に必ずさとりを開いて成仏することが出来るのである

といった内容です。

阿弥陀如来さまの真実心とは信心のことです。
そして信心とは、言うなればご本願のことです。

さらにそのご本願とは、阿弥陀さまが「法蔵菩薩」という菩薩の位であった頃(法蔵菩薩因位時…正信偈)
「生きとし生ける者全てを救うのだ」と、とんでもなく長い間お考え下さった、衆生救済の手立てのことです。

四十八の願いで構成されていますので「四十八願」とも呼ばれ、これは浄土真宗の根本聖典である
「仏説無量寿経」というお経典の中に詳しく記されております。

かなり長い内容ですので、ここで全てをご紹介することは出来ませんが、阿弥陀さま=法蔵菩薩さまは、
この衆生を救うための四十八の願いにおいて、「もしこの願いが叶わないのなら、私はさとりをひらかない
(不取正覚)」と断言されています。

つまり不退転の絶対的な決意において、十方衆生を救うのだ!と断言されているのです。

その後、法蔵菩薩さまは阿弥陀如来さまと成られ、西方浄土を建立し、そこに必ずこの世と別れを告げた衆生
=私を仏として迎え入れて下さる…これを本願力、と言います。

私たちは、苦しく大変な、自力修行というものができません。
ちょっと辛かったり、苦しかったりすると、すぐに投げ出してしまうからです。
ですから、元来自分の力では浄土に仏として生まれることが出来ない身であるのですが、
阿弥陀さまのお力=「他力」によって、「本願」である全ての衆生の浄土往生を実現して下さるのが
「他力本願」なのです。

今日、他人をアテにして自分は楽をしようとするのを「他力本願」と言われていますが、これは全くの誤用で
大きな間違いです。

また、真実信心とは、阿弥陀さまより衆生に与えられた本願力回向の信心ともいわれています。
阿弥陀さまから賜った信心であるから大信ともいい一心とも言います。

親鸞聖人はこれを、「疑蓋間雑なきがゆゑに、これを信楽と名づく。信楽すなはちこれ一心なり、
一心すなはちこれ真実信心なり」(教行信証・信巻 二三一頁) 
と仰せになっており、信楽(しんぎょう)
ともいわれ、無疑心(むぎしん)のことであって、疑心なく本願の「南無阿弥陀仏の名号を領受した心をいう、
とされています。

説明が長くなりましたが、浄土真宗における信心とは私たち衆生の側から起こしていく能動的な「信じる」
「信じない」という心の事ではなく、阿弥陀さまから賜るものなのです。

何を賜るのか?それは浄土往生というお救いです。
ですから、信心とは阿弥陀さまから賜るお救いへの、一点の疑いもない受容態度なのです。

沙婆世界に生きる私たちは、自分の頭の中で様々なことを信じる、信じないを決めて生きています。
たいてい、「人を信じる」とは自分の期待をそこに置くことです。
その期待通りになれば喜び、また期待を裏切られれば悲しむ…さらにその期待に欲が乗っかれば、
騙した、騙されたへと発展します。

人間関係のトラブルはたいてい、この期待に起因しているのではないでしょうか?
阿弥陀さまから賜る信心とはそんなレベルのものではありません。
なぜなら、決して私を見捨てない、絶対的なお救いだからです。

自分の都合で信じる、信じないとか迷い続けるそんな私を救わんがために、今この時も阿弥陀さまは私を
案じて、隣に寄り添っておられます。
そして、「我が名を称えておくれ」と願っておられます。
それが南無阿弥陀仏のお念仏であり、お念仏はすなわち阿弥陀さまの声をお聞きすることであり、そして
こんな私をお救い下さる阿弥陀さまへの御恩に報いることなのです。

どうか皆様、良い年をお迎えくださいますように。
南無阿弥陀仏
南無阿弥陀仏

善教寺住職
釋 一心(西守 騎世将)







 


 
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