十方微塵世界の
念仏の衆生をみそなはし
摂取してすてざれば
阿弥陀となづけたてまつる

(浄土和讃:註釈版聖典 五七一頁)


みなさん、こんにちは。あっという間に今年も残すところ2か月となりました。
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月に入ると忙しさも倍増しますので、今年やり残したことや、やり忘れたことなどを見つめなおし、
取り掛かれるのも今月しかありませんね。
来月の師走にやろううなんて考えていると、来月は大変なことになりそうですので、私もこれから
早々にお歳暮や年賀状の準備に取り掛かりたいです。

さて実は先日、当寺の坊守=家内が脳梗塞で倒れ、そのまま入院となりました。
発見してすぐに私は携帯電話を取りに行きいざ電話!となった時、「あれ?110番だっけ?
119番だっけ?」と一瞬固まりました。
私は「危機管理の神様・佐々淳行先生」から直に危機管理を叩きこまれ、その教えを承継して
講演などもしている身でありながら、110番も119番もわからなくなったのに驚きました。
おそらくこれが他人であったら冷静だったと思います。
でも、身内にこんなことがあると、人なんてこんなものなんですね。
そして救急車で病院に搬送されました。(もちろんすぐに119番であることを思い出しました)
この時、家内の体は左半身が麻痺していて、医師からは「覚悟をしていてください」とも
告げられました。

様々な検査をしている最中、私は待合室でいろんなことを考えました。
まず、家内は今後車椅子生活になるだろう…そのために、家に小型エレベーターを取り付けないと
いけない…その他、様々な家内が暮らせるための準備が要るだろう…。
そして、熊本地震で全壊したお寺の再建に向けて今日まで頑張ってきたけど、これは全て
家内あっての一大事業だし、そのために自分は得度し僧侶になり、住職に就任した。
しかし一人では出来っこない。これからどうしたらいいんだろう…一人で考えていると不安が
さらに不安を呼び、増々辛くなっていきます。

その後集中治療室に移り、入院となりました。
時代はコロナの世。面会は例え家族であっても禁止で、家内にはそこから会えなくなりました。
我が家には大きなゴールデン・レトリーバーと3匹の猫がいます。
これから、家事をしながらこの子たちの面倒を見、そして他でも仕事を持っていますので仕事も
こなさないといけません。
加えて毎日毎晩の勤行もしています。
もうやることだらけで、食事もまともに取れず、疲れ切ってそのまま寝てしまうことも
多々ありました。
そしてさらに熊本県にいるご門徒さまからの法要依頼や、葬儀の依頼もあり、もう毎日が
戦争のようでした。
おかげで、一か月で体重が7キロ落ち、ウエストも5センチ以上細くなりましたけど…

でも驚くことに家内は驚異的な回復力で、数日後には歩けるようになり、またしばらくして
会話もできるようになりました。
左手も少し不自由ですが、動くので、携帯電話のLINEアプリを使って、面会に行けない家内の
様子を本人から送ってもらえるようになりました。
その後回復期のリハビリ専門の病院に転院し、おかげさまで一か月半で退院することが
できました。
まだ左手の指が動かしづらいようですが、これはもう毎日の家事でのリハビリを続けて
いくしかないでしょう。

今回学んだことは、まず人は、自分がしっかりと立っていなければ、他の人を支えることなど
できない、という事でした。
私たち夫婦には、熊本のご門徒さま達の心の拠り所となるお寺の再建という責務があります。
しかし、これは自分たちがしっかり立っていて初めて成し遂げられることなのです。
そう思うと、まずは何よりも自分たちが健康であること。
これが無ければ再建など夢のまた夢…これを思い知らされました。

例話が長くなってしまいましたが、最初にお聞かせ頂きましたご和讃は、浄土和讃の中の
一首です。
十方の数限りない世界にいる、念仏の衆生をご覧になり、その者たちを光明の中に摂め取って
決して捨てることがない。
それゆえに阿弥陀如来と申し上げるのである、という意味です。
つまり、阿弥陀さまが阿弥陀さまである由縁は、摂取不捨の徳にあると示して、そのはたらきを
讃えられたご和讃です。
阿弥陀さまは法蔵菩薩と名乗られていた頃、真実に背を向け我欲や愛憎という煩悩に沈んでいる
衆生を見捨てることが出来ず、必ず救うとご本願を立てられました。
阿弥陀さまのお慈悲のお心は、そんな我らを救わずにはおれないお心なのです。
ですから、摂取の光明に照らされた人生は、大きな安心を恵まれた人生であり、何が起こるか
わからないこの人生の中で、阿弥陀さまがいつも私たちを見守って下さっているのです。

今回家内を襲った大病と、その後の家内の回復の様子は、「寺を早く再建し、一日も早く門徒の
心の拠り所となれ」という阿弥陀さまからの勅命であったのだと、身に染みて理解出来ました。
実際に今回奇跡的に家内は動けるようにはなりましたが、先にも述べましたように、
何が起こるかわからない人生です。
どうかお身体だけは大切にされ、いつまでも健康でいられるようにしてください。


南無阿弥陀仏
南無阿弥陀仏

善教寺住職
釋 一心(西守 騎世将)







 


 
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