さればこの信をえたる位を
経には「即得往生住不退転」と説き
釈には「一念発起入正定之聚」ともいへり
これすなわち、不来迎の談
平生業成の義なり
【蓮如上人 御文章】( 註釈版聖典一〇八五頁)

「なぜ最近自分はこんなにやることがあって、忙しいのだろうか?」と思いませんか?
仕事はもちろんのこと、私生活でも「浴室掃除」や「部屋の片付け」、「電球の交換」
やら、細々としたこといろいろ沢山ありますね。

思い返せば、いろんな事が便利になればなるほど、とあることが楽に、便利になった反面、
別の事が忙しくなったように思えます。
たとえばスマートフォン。
元々はただの電話です。
しかしこの数十年で圧倒的に進化し、大きな機械がとてもコンパクトになり、カメラが
付いたと思ったらインターネット接続もできるようにもなり、無限の可能性を秘めた
ツールになりました。
ふと気付くと、SNSやインターネットのサイト閲覧に没頭してあっという間に時間が経ち
大切な電子メールの返信や確認の電話を入れることを忘れてしまっていた…なんてこと
よくありませんか?

私もフェイスブックを使用して、仏教の事や本業のヘリコプターの仕事のことなど、様々な
ことを発信しています。
そして、それに応じて色々な方からのコメントやご意見などを頂きます。
頂いたコメントに返信するのがマナー、と考えていますので、一件一件、そのコメントに
返信していると、あっという間に時間が経ってしまいます。

一番大変なのは誕生日。
SNSの「友達」というバーチャルな仲間から、数百件のお祝いのお言葉を頂きます。
それはそれで嬉しい限りなのですが、今度はその数百人一人一人にお礼のコメントをしないと
いけません。
これだけで数時間を要しますが、段々「これ、何のためにやっているのだろう…しかもこの
多くは会った事も無い人達だし…」と思うようになります。

冷静に考えれば、もっとやるべきこと、時間を掛けるべきこと、がたくさんあるのではない
でしょうか。
私は毎月この法語を考え、こうやって文章を作っていますが、ご法義を深く学び、自分に
落とし込んで、今度はいかにわかりやすく皆様にアウトプットしていくのか…は、当然ながら
時間を要します。
SNSの投稿内容やコメントへの返信を考えている場合じゃないんです。

ですから、私達は知らず知らずにこの短い人生を無駄にすごしているのかもしれません。
短い人生だからこそ、何をすべきか冷静に考え、思うことを今やる、やり遂げる。
それが後悔の無い人生なのでしょう。

平生業成(へいぜいごうじょう)とは、親鸞聖人のみ教えです。
生きている間に、浄土往生できる準備を完結しておくことの大切さを説かれています。
私達はこの世と縁が尽きる時に浄土往生が決まるのではありません。
阿弥陀さまから信心を賜り、「浄土に連れて行くぞ。我にまかせよ。必ず救うから」という
南無阿弥陀仏のお念仏から聞かせて頂く喚び声を常に感じて、浄土往生が決まる、つまりは
今この時点で極楽浄土への切符を頂いておくことが最も大切なのだという、尊い聖人からの
み教えです。

今日も、やるべきことをぜすに、したいことをしながら無駄に一日を過ごしてしまう私。
よくよく考えれば、小学生の頃の夏休みの宿題を全くやらなくて、夏休みが終わる頃に
途方に暮れる…そんな子供の頃からの、やっている事は何も変わっていないんですね。

合掌

善教寺住職
釋 一心(西守 騎世将)





 


 
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