無礙光仏(むげこうぶつ)のひかりには
清浄(しょうじょう)・歓喜(かんぎ)・智慧光(ちえこう)
その徳(とく)不可思議(ふかしぎ)にて
十方諸有(じっぽうしょう)を利益(りやく)せり

…浄土和讃
(註釈版聖典五六六頁))

誓願を成就してくださった阿弥陀さまの、なにものにも妨げられない救いの光には
清浄光、歓喜光、智慧光の三つの光があり、それぞれ我々衆生の持つ
貪欲(とんよく)、瞋恚(しんに)愚痴(ぐち)という病を治して下さいます。
清浄光は、むさぼりの心である貪欲の煩悩を消し、歓喜光はいかり腹立ちの煩悩で
ある瞋恚を消し、そして智慧光はおろかさである愚痴の闇を破り、罪悪凡夫の私を
信心一つで往生成仏せしめて下さる。
そんな阿弥陀さまのお徳はとても不可思議であり、全ての迷いの衆生を利益される
のです。

今、全世界中が新型コロナウイルスの脅威にさらされており、毎日たくさんの方が
感染され、そしてお亡くなりになっています。
先日は稀代の天才コメディアン、喜劇王の志村けんさんが、この病でお亡くなりに
なられました。
未だ有効な治療方法は見つからず、まさに暗闇の中を不安を抱えたまま、毎日を
生きている、と言っても過言ではないです。
今迄の当たり前が当たり前でなくなり、そして非常識が当たり前となる、大変な
時代を私たちは生きることになりました。

思い起こせば、私たちはお金や財産、他人の目や評価、地位名声といったものに
心惑わされ、身勝手でもありますから、思い通りにならないとイライラしたり、
考えすぎ、くよくよしたりして、何が正しいのかすらもわからない、智慧のない
生き方をしてきました。
そしてこれから、もっともっと外出の自粛や様々な自由を奪われることが予想され
そんな愚かさがもっともっと、倍増していくやもしれません。

更には、「自分は大丈夫」と根拠の無い自信から人ごみに集まり、感染し、さらに
それを他の人に感染させてしまう危うさもはらんでいます。

新型コロナウィルスというものも、一つの存在価値を持ってこの自然界に発生しま
した。それを「悪」とするのは人間のエゴであって、むしろ愚かな人間こそがこの
地球にとって「悪」ともなり得るのです。
ですから、地球やウィルスにとって、人間の都合は知った事ではないのです。
おそらくこのウィルスは世の中から無くなることは無いと思います。
むしろ、このウィルスとこれからの世の中を生きて行かなければならない…そんな
時代に入って来たのだと、私は覚悟しています。

だからこそ、今一度ここで、私たちはいかに愚かで智慧のない生き物だったのか、を
あらためて考え、そしてどうやって生き抜いていくのか、を全人類が考え直す機会で
あると思います。
そこに立っている限り、苦悩の連鎖は止まらず、不安や怒り、自己都合といった考えが
あふれ出て来るばかり。
そんな苦悩を持ち続けても、ウィルスはいなくならず感染も防げるわけでもありません。

「俺が…私が…」と我を張る私が今思うと恥ずかしい…
むさぼる心によって振り回され、買占めや我先と走る自分自身がいかに醜いか…
怒り狂い、心のナイフという切っ先を人に向ける自分の姿はどれほど見苦しいことか…

もしそう思う心が生まれるのなら、それこそが阿弥陀さまから賜った心でしょう。
つまりは、もう阿弥陀さまの救いの光に照らされ、清浄光によってむさぼりの貪欲
を納め、歓喜光によっていかりを沈め、智慧光によって愚かさを捨て智慧を得て、
自分は何をすべきなのか、どう考えるべきなのか、と変わっていくのです。
そして今がまさに、その時なのだと思います。

言い換えれば、この今こそ、阿弥陀さまの声をしっかり聞く機会であるのでしょう。
南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏…と。

どなたさまも、くれぐれもご自愛され、手洗い、うがいを徹底し、不要な外出を避け
密室、密閉、密接を避けて、決して感染しないようにお気を付け下さい。

合掌

善教寺住職
釋 一心(西守 騎世将)





 


 
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